阪神・淡路大震災における取り組み
新井組の対応と取り組み
新井組は、被災地に本社を置くゼネコンとして、地震発生直後の人命救助活動や救援活動をはじめ、その後の震災復興活動にも幅広い支援活動を行ってきました。ここでは、そうした経験の一部をご紹介します。
震災発生直後の対応(人的救援,物的救援)
当社は被災地(西宮市)に本社を置いていることから、地震発生直後から得意先や地方自治体、公共機関、病院、さらには地域住民の方々からの緊急出動要請、震災復旧への依頼が殺到しました。 「被災者の方々からのご依頼に最大限にお応えすることこそ、被災地に本社のあるゼネコンの使命である。」との経営トップの方針が示され、地域の被災者救助を最優先して、多くの社員・協力業者が人命救助活動や医療施設等への救援活動を行い、幹線道路や鉄道の緊急復旧、被災者からの震災復旧要請への対応や建物診断等に携わりました。 応急対応・復旧等は、当社の施工物件ではないものも全て受け入れ、寄せられた救援・応援・復旧要請は、地震発生から1ヶ月間で約4,500件に達しました。

(交通マヒ状態の国道2号線)
- 新井組の支援概要 -
- 地震直後の依頼内容一覧(1995年1月17日~24日) -
【 救援並びに震災復旧依頼の地域別件数 】

震災復旧対応(建物被害調査、復旧工事)
- 建物被害調査 -
当社は本社が西宮市にあって、神戸市、芦屋市とともに大きな被害を受けた地域に位置しているため、地震発生の直後から、地域住民あるいは行政担当者等より建物の被害度の調査依頼が殺到しました。 こうした要請に対応すべく、東京、名古屋からも技術系社員を招集して、建築物・土木構造物の被災状況を調査しました。 調査の内容は、建築物・土木構造物の被災状況を概括的に把握し、被災建物の緊急の安全性の確認と復旧計画検討のための資料とすること、および今後の耐震性検討の基礎資料とするためのものでした。 下図は調査結果の一部です。1981年(昭和56年)の新耐震設計基準以前に建設された建物の被害が大きいことが分かります。
【 新耐震以前および以後の被害の割合 】

- 復旧工事 -
被災者からの依頼内容は、地震発生直後は人命救助や危険防止処置等の緊急を要する救援依頼が中心でしたが、時間の経過とともに、安全確保のための耐震診断からライフラインの復旧によって自宅に戻るための応急復旧へと変化し、その後は本格復旧に向けた補修・補強計画やその見積依頼、さらには工事着手へと質的な変化が見られるようになりました。 当社は、集合住宅などの被災建築物、土木構造物の震災復旧工事を数多く手掛けました。 下表は、建築物の復旧工事等の実績の一部です。
【 復旧工事等の主な実績 】
また、西宮市より震災廃棄物の処理業務を受注し、207.5万トンというかつてない大量の震災廃棄物処理を経験しました。

- 社外公表資料 -
- 「被災者は住宅エネルギー供給の復旧に何を求めたか」住宅環境・エネルギー研究会、特別寄稿および講演、1997年3月
- 「震災廃棄物の発生状況と中間処理」廃棄物学会、2000年7月
- 「土木と私―大震災ガレキの後始末」建設業界(研究余滴 野帳余白)、2001年9月
学術的調査対応(学術的・技術的被災調査)
新井組は被災建設物の震害に関する学術的調査にも積極的に参画しました。 被災ゼネコンとして、建築学会、土木学会、コンクリート工学会などの学術調査に協力し、共同調査・共同研究を実施しました。 また、当社独自でも被災建設物の震害調査を行い、日本建築学会等に発表しました。
【 社外公表資料 】
1.日本建築学会、地盤工学会他で震害調査結果報告(1995年~1999年)
- 「鉄筋コンクリート系構造物の層崩壊の要因を探る」1996年9月
- 「都市直下型地震災害総合シンポジウム」1996年11月
- 「兵庫県南部地震による被災送水トンネルの復旧」1997年11月
- 「兵庫県南部地震・材料、施工に関する被害調査報告書」1996年3月
2.「兵庫県南部地震による建物杭基礎の被害調査報告と杭の破壊状況における上部架構の影響の考察(西宮市の事例)」日本建築学会技術報告、1996年12月
新井組は阪神・淡路大震災の経験をもとに、当社独自の設計指針を策定し、現在もマンション等の設計に役立てています。

震災復興対応
新井組は、被災地域の共同住宅等の建替事業にも積極的に取り組み、震災復興に貢献しました。
- 耐震技術等の開発 -
- BIGSAFE:新井組免震構法
- APROVE:新井組制振構法
- 安震ブロック:RM耐震補強工法
- AHEAD-RCS:新井組混合構造
- SPLIT工法:鉄骨柱梁接合構法
- PRISM:新井組補強土工法 他
- 震災復興住宅の企画提案 -
住宅規模可変・共同住宅の提案 他
【 分譲マンション建替事業 】
竣工 | 旧マンション名 | 新井組の役割 | 地上階数 | 施設構成 | 住宅戸数 |
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1999年 | Nマンション | 事業協力・施工 | 11階 | 共同住宅・店舗 | 172戸 |
1999年 | Mマンション | 事業協力・監理・施工 | 29階 | 共同住宅 | 277戸 |
1998年 | Cマンション | 事業協力・施工 | 11階 | 共同住宅 | 111戸 |
1998年 | Kコーポラス | 事業協力・施工 | 9階 | 共同住宅 | 68戸 |
1998年 | Kコーポラス | 施行・事業協力・監理・施工 | 7階 | 共同住宅 | 32戸 |
1998年 | Aコーポラス | 施行・事業協力・施工 | 7階 | 共同住宅 | 27戸 |
1997年 | Sマンション | 施工 | 7階 | 共同住宅 | 72戸 |
1997年 | Cマンション | 事業協力・施工 | 10階 | 共同住宅 | 52戸 |
1997年 | Kコーポラス | 事業協力・施工 | 11階 | 共同住宅 | 34戸 |
1996年 | Fマンション | 施工 | 3階 | 共同住宅 | 12戸 |
1996年 | Oコーポラス | 施工 | 4階 | 共同住宅 | 24戸 |
【 共同化建替事業 】
竣工 | 地区名称 | 新井組の役割 | 地上階数 | 施設構成 | 住宅戸数 |
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2000年 | 神戸市長田区水笠通4丁目地区 | 事業協力・内装監理・施工 | 13階 | 共同住宅・店舗 | 88戸 |
2000年 | 神戸市西灘地区 | 事業協力・施工 | 11階 | 共同住宅 | 57戸 |
1999年 | 西宮市甲東園駅東地区 | 事業協力・施工 | 13階 | 共同住宅・店舗 | 119戸 |
1998年 | 神戸市長田区4番町1丁目地区 | 事業協力・施工 | 10階 | 共同住宅・店舗 | 54戸 |
1997年 | 神戸市兵庫区新開地3丁目地区 | 企画・設計・監理・施工 | 7階 | 共同住宅・店舗 | 17戸 |
1997年 | 神戸市中央区二宮町1丁目地区 | 施工 | 6階 | 共同住宅 | 10戸 |
1997年 | 神戸市長田区二葉町2丁目地区 | 施行・施工 | 6階 | 共同住宅・店舗 | 20戸 |
1996年 | 神戸市東灘区住吉宮町5丁目地区 | 施行・設計監理・施工 | 5階 | 共同住宅 | 13戸 |
【 都市再開発事業 】
竣工 | 地区名称 | 新井組の役割 | 地上階数 | 施設構成 | 住宅戸数 |
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2000年 | 西宮市西宮北口駅北東地区 | 施工 | 20階 | 共同住宅・店舗 | 167戸 |
1999年 | 神戸市兵庫区新開地6丁目東地区 | デベロッパー・施工 | 17階 | 共同住宅・店舗 | 147戸 |
地震の概要と被災状況
- 地震の概要と被災状況 -
1995年1月17日早朝に発生した兵庫県南部地震は、神戸市をはじめとして阪神間、淡路島の各地に未曾有の被害をもたらし、6,434名の尊い人命が失われました。 多数の建築物、家屋が倒壊し、新幹線や高速道路、主要幹線道路の寸断、さらには電気・ガス・上下水道・通信など生活を支えるライフラインの麻痺によって、高度に発達した都市空間の脆弱な一面が浮き彫りとなりました。
地震の概要
【阪神・淡路大震災について(確定報) 平成18年5月19日、消防庁】
地震名 | 平成7年(1995年)兵庫県南部地震 |
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発生年月日 | 1995年1月17日(火)5時46分 |
震源地 | 淡路島北部(北緯34度36分、東経135度2分) |
震源の深さ | 16km |
規模 | マグニチュード7.3 |
各地の震度 |
震度7
神戸市須磨区鷹取、長田区大橋、兵庫区大開、中央区三宮、灘区六甲道、芦屋市芦屋駅付近、西宮市夙川等、宝塚市の一部、淡路島北部の北淡町、一宮町、津名町の一部
震度6
神戸、洲本
震度5
京都、彦根、豊岡
震度4
岐阜、四日市、上野、福井、敦賀、津、和歌山、姫路、舞鶴、大阪、高松、岡山、徳島、津山、多度津、鳥取、福山、高知、境、呉、奈良
震度3
山口、萩、尾鷲、伊良湖、富山、飯田、諏訪、金沢、潮岬、松江、米子、室戸岬、松山、広島、西郷、輪島、名古屋、大分
震度2
佐賀、三島、浜松、高山、伏木、河口湖、宇和島、宿毛、松本、御前岬、静岡、甲府、長野、横浜、熊本、日田、都城、軽井沢、高田、下関、宮崎、人吉
震度1
福岡、熊谷、東京、水戸、網代、浜田、新潟、足摺、宇都宮、前橋、小名浜、延岡、平戸、鹿児島、館山、千葉、秩父、阿蘇山、柿岡
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被害状況
【阪神・淡路大震災について(確定報) 平成18年5月19日、消防庁】
【平成18年版消防白書 消防庁】
【 人的被害 】
兵庫県 | 大阪府 | 京都府 | 他県 | |||
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死者 | 6,434名 | 6,402名 | 31名 | 1名 | - | |
行方不明者 | 3名 | 3名 | - | - | - | |
負傷者 | 重症 | 10,683名 | 10,494名 | 175名 | 3名 | 11名 |
軽傷 | 33,109名 | 29,598名 | 3,414名 | 46名 | 51名 | |
計 | 43,792名 | 40,092名 | 3,589名 | 49名 | 62名 |
注)死者の中には、災害発生後疾病により死亡した者のうち、その疾病の発生原因や疾病を著しく悪化させたことについて災害と相当因果関係があるとして関係市町で災害による死者としたものが含まれている。
【 物的被害 】
兵庫県 | 大阪府 | 京都府 | 他県 | |||
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住家被害 | 全壊 | 104,906棟 186,175世帯 |
104,004棟 182,751世帯 |
895棟 3,416世帯 |
3棟 3世帯 |
4棟 5世帯 |
半壊 | 144,274棟 274,182世帯 |
136,952棟 256,857世帯 |
7,232棟 17,233世帯 |
6棟 6世帯 |
84棟 86世帯 |
|
一部損壊 | 390,506棟 | |||||
合計 | 639,686棟 | |||||
非住家被害 | 公共建物 | 1,579棟 | ||||
その他 | 40,917棟 | |||||
文教施設 | 1,875箇所 | |||||
道路 | 7,245箇所 | |||||
橋梁 | 330箇所 | |||||
河川 | 774箇所 | |||||
崖くずれ | 347箇所 | |||||
ブロック塀等 | 2,468箇所 |
【 ライフライン被害 】
水道断水 | 約130万戸 | (ピーク時、厚生省調べ) |
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ガス供給停止 | 約86万戸 | (ピーク時、資源エネルギー庁調べ) |
停電 | 約260万戸 | (ピーク時、資源エネルギー庁調べ) |
電話不通 | 30万回線超 | (ピーク時、郵政省調べ) |
【 火災 】
出火件数 | 建物火災 | 269件 |
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車両火災 | 9件 | |
その他火災 | 15件 | |
合計 | 293件 | |
焼損床面積 | 835,858㎡ |